なぜアート業界に入ったの?

と最近良く聞かれて困まってしまう。
私から大そうまっとうな理由が返ってくるのを期待しているような、そんな顔で聞かれてとても困るんですが、申し訳ないですが、一言で言ってしまうと成り行きです。
ほんと申し訳ないんですけどね。。(特にアート関係の仕事や勉強をされていた方に聞かれると参ります。。)


もともと絵を見るのは好きだったし、美術館とかもたまに行っていた。だけど、まさか自分でもアートを仕事にするとは思わなかった。別に自分が絵を描けるわけでもないし、てか超不器用だし。。



サラリーマン生活に閉塞感を感じていたとき、偶然莫干山路50号(M50)を訪れて一目ぼれした。自由でゆったりした雰囲気が気に入り、会社の休職制度をつかって、3ヶ月間M50のギャラリーに飛び込みでバイトさせてもらうことにした。
バイトしながら自分なりにいろいろ調べてみると、中国アートは世界のアートシーンから見ても盛り上がっていて、特に中国現代アートを取巻く環境が非常に面白いということを発見。


私が中国に来た一番の理由は、国の成長というものを自分の目で見たかったから。
私の世代が社会に対して目を向けるようになった頃には、すでにバブルが崩壊していたので、経済成長というものの実感が全然ない。ニュースでは毎日、就職難、予算カット、給料カット、リストラ、リストラ、、そんな話ばっかりだ。
上の世代はみんな「あの頃はよかった」と口をそろえて言うけど、だいたいバブルっていったいどういうことなのよ?数字で言われてもわかんねーよ!と思うわけで。


日本で再び高度経済成長が訪れることはない。ならその真っ只中にある国にいくしかないんじゃないか、ということで中国に来た。大連にある会社に転職。
古いものから新しいものへ変わっていく、その「急激な変化」が見たかった。




でも大連ではそれがよく分からなかった。
アメリカの企業にいたということもあったかもしれないけど、私の期待していた「変化」はあまり感じられなかった。たしかに、外資の投資は多いし、優秀な人材もたくさんいる。でも上海とは比較の対象にならない。


上海は今世界で最も熱い都市だ。
しかも北京にはない開放感があり国際色が強い。貧富の差も大きく、新旧入り混じった「カオス」がある。いい意味でも悪い意味でも、人間の「欲」を感じる。ギラギラしたやつが多い。
上海、そして中国現代アート、これ以上ホットな組み合わせは無いんじゃないか?


と、こんな偶然のタイミングが重なった成り行きで、M50のアートベンチャーで仕事してます。(この会社も半分飛び込みで入ったんですけどね。。上海にいると、なにかとアグレッシブになれますね。)




なのでこのロジックからいくと、もしかしたら今頃不動産ビジネスをやっていたかもしれないし、中国語の語学ビジネスだったかもしれない。


ただ、この業界を選んでよかったと思えることは、みんなめちゃくちゃ若いということ。
年じゃなくて、気持ちの方が。
好きなことばっかりやってきた連中ばかり(特にアーティストの方は)だから、年齢の割りに若くてエネルギッシュ。そんな人たちが周りにいるので、私自身も少しづつ若返っている気がする。(前の会社では中間管理職みたいなポジションで、日に日に老けていくのを感じましたので。。)



芸術という価値があって無いようなものに関わる仕事をするようになって、いろいろ人や本や作品に出会い、その度に「アートとは?」ということを考えさせられる。


なんだかんだ難しいことを言っても、美しいこと、かっこいいこと、楽しいこと、それが一番。そう思えることが大切だと思う。
すべての人にとって、アートというものの価値を最大化できるよう、仕事をしていきたい。


楽しみながら。楽しみながら。